作家の手帖

じぶんの「つづき」を書こう。

うっかり「俳句とお金」

担当する目次

原稿料:文字単価/署名/著作権/CCライセンス/印税/リテイク

プロフィール

第二回全国俳誌面協会新人賞準賞。BFC1に「抱けぬ身体」原英にて本戦出場。第十回北斗賞佳作 関西現代俳句協会青年部のHPに10句

初稿

1. 俳人たちの集い

 俳人は黙々と俳句を詠んでいるように思われているかもしれない。実際は俳句をきっかけとしてよく集まり、よくしゃべる。俳句は純粋読者がほぼおらず、読めば詠むという文芸だ。句会も活発に行われる。句会での作品は無記名で平等に扱われ、参加者で選評を言い合い、ゲームと会議の中間のような雰囲気で行われる。有名な俳人でも俳句初心者でも無記名なので関係ない。最後に票の入った句の作者が明かされる。指導を任されている、或いは依頼されている立場の人は作品に対してアドバイスを行う。またはそのような立場の人がいない句会も多い。

2. 俳句人口

 俳句を詠む人が100万人はいると言われる中で、俳句の原稿や指導料で収入を得ている人は1000人に満たないはずだ。数十人規模以上の結社や同人誌は600誌程度しかないからだ(2021年角川俳句年鑑記載の数は592誌)。俳句における結社とは、師とその弟子の集団だ。そして月刊、或いは季刊の結社誌という発表媒体を持つ。同人誌はそれに対して、編集上のリーダーはいるが、その弟子たちという構図ではなく、関係性は平等だ。これら団体のリーダーであっても俳句関連業で生計を立てている人はおそらく10人もいないだろう。さらにいえば、創作だけで生計を立てている人はいない。結社の主宰でもほとんど本業を持っている。

3. 俳句にかかる出費、そして収入

3-1. 出費

会費や書籍購入費がほとんど

  1. 結社や同人誌、協会の年会費
  2. 句会の会費(場所代)
  3. 句集や俳句雑誌の購入費
  4. 勉強会や講座の受講費
  5. 賞の応募費(送料ではない)
  6. 句集出版(基本自費出版)
  7. イベント参加における交通費

 俳句は紙とペンがあればお金がかかりませんと言われる。一人で書くだけならいいが、実際は句会への参加や書籍購入にお金がかかる。結社や同人誌や協会は年会費1万円程度。句集は2000円前後と高く、加えて俳句雑誌を買うと月に1万円程度すぐに無くなってしまう。そして句会に参加すると別途場所代などで支払いが発生する。さらに句会後の打ち上げでまた出費がある。このお酒の席は勉強会に近いため、これが必要な出費かどうか判断が難しい。俳句の依頼をもらうには実力も必要だが、その上に人付き合いがかなり大きな割合を占めているからだ。

3-2. 収入

原稿料か指導料

  1. 自身の俳句の原稿料
  2. 鑑賞、評論の原稿料
  3. 俳句エッセイなどの原稿料
  4. 賞金
  5. 句会における指導料
  6. 講座による指導料
  7. 個別添削による指導料
  8. 俳句大会における選考料
  9. 印税
  10. イベント出演の交通費、資料代

 俳句だけでは食べていけないとよく言われる。まず、原稿料が出ない。むしろ俳句の世界では掲載にあたっては執筆者がお金を支払うシステムになっている。それは俳句の発表媒体のほとんどが結社誌や同人誌だからだ。これらは営利目的でないため、必要経費を参加者が支払う形式が多い。それでも足りない場合は寄付を募ることもある。句集もほぼ自費出版で、100万円以上かかる。原稿料が出るのは商業誌くらいだろう。その原稿料も連作の発表で数千円から数万円程度、そして基本的には単発の依頼だ。

 句換算での原稿料は高くても1000円程度だ。500円だとした場合、月に500句以上商業誌掲載されなければ家族を養うなどの生活は苦しいだろう。ただ、発表できるレベルの500句を毎月詠むのは難しい。参考までに私が詠むのは月平均で100句程度だ。俳人であればやや少ない方だろう。私が聞いた中で一番多いのは月平均600句だ。もちろん全て発表できるレベルというわけではない。さらに言えば、それだけの句を発表させてくれる俳句誌はない。つまり、俳句を詠むだけでは生活は成り立たない。講座の指導料は一回で数万円いただけることもあるが、書く能力と教える能力そしてネームバリューが伴わないと継続した依頼が来ない。ちなみに私が講座や俳句大会の選考をしても交通費名目で数千円程度、あるいはボランティアだ。

 例外として、詩歌関連以外の商業誌、或いは新聞などは詩歌でも原稿料が高い。その桁は一つか二つ上になる。しかしこれらに期待してはいけないと思っている。小説雑誌は小説の発表媒体であるため、俳人へ継続的に俳句創作の依頼は来ない。新聞も同様だ。

 4. 専業俳人という未来

 現状、俳句だけ詠んでいても生活ができる、あるいは生活の足しになる額は得られない。そのためには革新的なアイディアが必要だ。

 具体案として一句でも発表できる媒体があればどうか。それも一句で一日の生活費に相当する原稿料が出ればどうか。そのような考えのもと、俳句に限らず、短詩を一枚の紙に活版印刷し、販売する「一枚の本」という事業を立ち上げる予定だ。小説家のように、専業俳人という選択肢があれば、俳句業界はより良くなるだろう。

※こちらは「初稿」です。「完成稿」は購読者限定です。購読チケットはSTORESから。



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